その1 〜出会ってはいけない人たちもいる〜
「悪司! まさかあなたがここにいるなんて!」
「なんだ? 新入りか?」
「私よ、悪司! ルソン島で……」
「え〜と、誰だっけ? おまえ」
修羅場、勃発。
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その2 〜ていうか、設定矛盾するし〜
「悪司……」
「あ? あんたも何か用かい?」
「覚えてない…………どうなってるの、エルベヘス?」
「記憶を覗いたが、この男、嘘は言っていない。信じられないことだが我々の知る悪司ではない。別人だ」
「いくら裏ヒロインだからって……こんな扱いひどい……!」
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その3 〜ラミカの危惧〜
(ぜったいに納得行かない!)
ラミカは心の中で叫んだ。
せっかく大好きな幼馴染の要塞に乗り込めたと思ったのに、そこには予想外の事態が待ち受けていたのだ。
(ナナス君をGetするのに邪魔になりそうなのは、ミュラだけだと思ってたのに! 何よ、このいっぱいの女の子は!)
そこには異世界から召喚された勇者たちがおり、その大半は何故か美しい女性たちだった。
(しかも、しかもしかも……さっき召喚された女なんかー!)
「決めた。報酬はおまえさんの童貞ね」
素肌の上に露出の多い金色のアーマーをつけた女戦士は、一同の面前でいけしゃあしゃあとそんな台詞を口にした。
事態は悪化の一途を辿っており、油断のならない状況なのだった。
「それで、ナナス君はどこに行ったのかな……?」
「ねえ、そこの人。ナナス君見かけなかった?」
「将軍かい? えーと、さっきセレストとかいうヤツと話してたぞ」
「だれ、それ?」
「青い髪で戦士風の出で立ちした優男」
「ふ〜ん、そう。ありがと」
(男の人と一緒か。それなら一安心)
「気をつけなよ」
「? なにが?」
その男は耳を寄せてくると、小声で言った。
「セレストってやつな、ホモらしいぜ」
「え……、ええええーーーー!!!」
ホントに、もう、一刻の猶予もならない。誰も信じられないような状況なのだった。
「ナナス君ナナス君ナナス君ナナスくーーーん!!!」
その頃、ナナスは……
「それで、セレストさんに聞きましたけど、相談って?」
「その……誰に言ったらいいか悩んだんですけど、やっぱり将軍だし、ナナスさんなら協力してくれるかと思って……」
「ぼくに出来ることだったら、力になりますけど」
「その、私、戦う為にエネルギーが必要なんです。ドキドキすること……それがエネルギーになるんです。だから……その……私とえっちしてもらえませんか?」
「ええっ!?」
この人が、その意味ではいちばん危険だと思います。ラミカさん。
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その4 〜レアアイテムの入手法〜
「…………何をやっている?」
麗蘭は、自分の背中でごそごそしている鏡花を見咎めて言った。
「いやー、その、身軽の羽ってあるでしょ。同じ羽だからもしかして――」
「そんなわけがあるか! だいたい妾の羽をむしるくらいなら、そのヘビの羽でも使えばよかろうが!」
「チロはヘビじゃなくて蛇蛟(じゃこう)よ!」
「ヘビはヘビだ。かわらぬわ!」
「なんですってー!」
「あ、あの、おふたりとも、ケンカはやめたほうが……」
ふたりを止めに入ったシグルーンは、兜を脱ぐとそれを差し出した。
「この羽をつかうというのはどうですか?」
にっこりと笑って、兜の両側に付いた羽飾りを指す。
その笑顔に毒気を抜かれて、鏡花と麗蘭のふたりも矛を収めた。
「いや、それには及ばん」
「そ、そうよ。その羽はもらえないって」
ふたりに言われて、シグルーンは、そうですか、と兜をかぶる。
「それじゃ、あれなんかどうでしょうか? とっても素早くなれそうですけど」
と、指した先には――
「オオオオオオ!? みぐるみ剥がされ丸裸!?」
その後、ジャックの姿を見たものはいない。
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その5 〜レアアイテムなら良いというものでもない〜
ママトトでは、経験値の管理・アイテムの管理などはすべて将軍であるナナスの采配によっている。異空窟内で得られたものはすべて一旦ナナスに預けられ、彼が最良の配分を模索する、のだが――
それは見当かなみがママトトに召喚されて間もないある日のこと。
療養が済み待機中だったかなみに、ナナスから呼び出しがかかった。
「えーと、かなみさんですね。あなたは身のこなしが素早いから――これを持っていてくれますか」
手渡されたのは小さな布製の巾着。
「はあ、ありがとうございます……」
神妙な手つきで受け取る。中に何が入っているのかはわからない。少なくとも、ロケットエンジンとか、持つのに困るような大きさのものではないようだ。
「なんでもかなり珍しいものみたいで、なかなか手に入らないんだ。大事にしてください」
人懐っこい笑顔を浮かべるナナスにお礼をいって、かなみは王の間を退出した。
「それで、何が入ってるのかしら……」
指輪とかならそのまま手渡せば良いのだし、こんな袋に入れるのは、何か小さくて落っことしそうなものだろう。例えば宝石みたいなものとか。ナナスも珍しいものだと言っていたことだし。
袋に手を突っ込んでみる。ツルツルとした感触。やっぱり宝石か。しかしそれにしては何か違和感が……
ぽと。手の平の上に取り出したソレは、ツルツルと滑らかに黒光りした小さな物体だった。ただし、6本のギザギザした足が生えていた。
それは、素早い変な虫。もっと平たく言えば、ゴキ――
「いやあああああああああああーーーー!?」
こんなことなら、じゅごんを3つ貰いたいと思うかなみであった。
しかし、両手の指を指輪だらけにしている人や、人の顔が浮き出た玉をいくつも持ち歩く魔法使い連中に比べたら、まだマシなのかもしれない。
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その6 〜合掌〜
「なんだって! 旗男さんが……?」
異空窟LV100。長崎旗男、自殺。
LV1のまま放置されていた、愛されないキャラの悲劇だった。
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その7 〜何故このイベントがないのか?〜
ある時、ふとアーヴィが言った。
「あれ、そういえば最近イデヨン動かないね」
「そういわれると……そんな気も……」
ナナスはイデヨンに溜まっている召喚鉱石を示すメーターを見た。
「98」あとひとかけらでも溜まればイデヨンは作動するはずだ。
「どりゃー!」
その時、ママトトの外で不思議兵が倒され、その骸に含まれていたわずかな召喚鉱石がイデヨンに送り込まれた。
「あ、あれっ?」
じっとメーターとにらめっこしていたナナスが素っ頓狂な声をあげる。
メーターは何事もなかったかのように「00」を指して止まっていた。
「いったい、いつから壊れていたんだろう……」
その後、数回試してみたものの、やはりイデヨンは作動しなかった。そして、ナナスはイデヨンが壊れてしまったと結論した。分解してみたものの、故障箇所は発見できなかったのだが……。
「どこも壊れていないみたいだけど、動かないんじゃしょうがないよね。ごめんなさい、父上」
「まあよいではないか。異世界の勇者も、もう随分とたくさん集まった。それに、召喚したとしても、ママトトにこれ以上住む場所もないじゃろう」
「残念だけど、そうだね……うん。それじゃ、みんなにはこれ以上召喚鉱石は必要ないって言っておかないと」
だがナナスはまだ知らなかった。召喚などで呼ばれずとも、人知を超えた手段でこの世界にやって来る猛者がいることを。そしてまた、異空窟に出現する宝箱は、時空を越えて異世界と繋がるゲートになり得ることを。
まだ仲間になるキャラは12人もいるのだ!
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あとがき
以前「ありすにょ」でSSを書いたものですが、さすがに「ままにょにょ」はキャラも多いし……ひとつの大きな話には出来そうにもないなァ、ということで。よく同人誌であるような4コマや1ページ漫画のようなノリで、つらつらと小ネタを集めてみました。
2003.2.18.
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